
今まで読んだ荻原さんの作品とちがい、若年性アルツハイマーをテーマとして淡々と語りかけてくる。
「誰だっけ、ほら、あの人」ではじまる、主人公佐伯は50歳になったばかり。「「鍵かけたっけ?」「あれ、何処に置いたっけ・・・」こんなことは日常茶飯事の私にも重なり、憶力の低下はここ数年前から自覚している。でも、ま、年のせいとは思ってみても、ボケとつながるとは思っていない。だけど「若年性アルツハイマーです」なんて宣告を受けたらどうだろう?
病気の進行を少しでも遅らせるために、メモをとったり、日記をつけたり忘れないように努力してもうまく行かなかったら、病気を利用されて、だまされたりはめられたりしたら、人に対しても自分に対しても悲しい。ましてこれから迷惑をかけるであろう家族のことを考えると、どうしたらよいのか考えさせられた。
もし、菅原老人のようなボケ方だったら、まだ救われえる。
もし、何もかも忘れても陶芸に生きられたら。
もし、何もかも忘れても家族に迷惑をかけないような可愛いボケ方だったら。生きていることを疎まれさえしなければと思うけれど、現実はそう上手くいかないことのほうが多い。
手遅れになる前に、まだ自分のことが何とかできるうちに、家族に迷惑をかけないようにしたいという気持ちはよくわかる。
さて、どうしたものかと身につまされる話だった。
テーマ:読書感想文
ジャンル:小説・文学